スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。

ECB利上げ観測強まりユーロが年初来高値更新 (2011/3/22 (火))

昨日の概況

東京市場は春分の日で休場。アジア市場では介入警戒感から81.00円付近へ上昇してスタートし、80.90円前後で底堅い動き。アジア株がプラス圏で終了し、欧州株式市場も軒並み大幅上昇したことから、81円を突破し81.30円付近まで続伸しました。81円台ミドルには本邦勢の売りオーダーが並んでおり、上昇もここで頭打ち。NY市場朝方は、米加当局による介入が見られなかったことから失望売りが出て80.95円付近へ反落しました。米財務省が「1420億ドルの政府保有MBS(住宅ローン担保証券)を今月から売却する」と発表し、米国長期金利が上昇したことから81.25円付近へ反発しましたが、米2月の中古住宅販売件数が488万件と予想の512万件を下回ったことから、長期金利も上昇幅を縮小し、ドル円も再び80.95円付近へ押し戻されました。ただダウが178ドル高と3日続伸したことから下値も堅く、終盤は81.10円付近へ持ち直しました。

ユーロドルは抵抗線の1.42台を前に利益確定の売りが出て1.4150付近へ下落。しかしメルシュ・ルクセンブルク中銀総裁が「インフレへの強い警戒(strong vigilance)が必要だ」と発言したことから、1.4200付近へ上昇。NY市場朝方は米財務省が1420億ドルの政府保有MBSを売却すると発表したことから1.4145付近へ下落したものの、反応は一時的となり1.4200付近と再度上値をトライ。トゥンペルグゲレルECB専務理事が「強い警戒が必要。必要があればECBは行動を起こす用意ある」とタカ派発言し、さらにトリシェECB総裁も「物価見通しに対するリスクは上向き。3月3日の記者会見の内容に付け足すことはない」と利上げを示唆したことから、1.4200を突破し、一時1.4235付近まで年初来高値を更新しました。ユーロ円も、介入こそ見られなかったものの、対ドルの上昇や株安にサポートされ115円台を回復し、115.40円付近までじり高の展開となりました。

ポンドも、アジア・欧州・米国と株式市場が堅調に推移し、リスク選好が回復したことや、ECBの利上げ期待を背景にユーロが大幅に上昇したことにもつられ、対ドルは1.6325付近、対円は132.30円付近まで上昇しました。

豪ドルも、株高・コモディティー高を背景に買い意欲が強まり、対ドルはパリティ(1豪ドル=1米ドル)を回復し1.0065付近まで上昇。対円も81.80円付近までじり高の展開となりました。米英仏などによるリビア空爆を受けて金相場は1430ドル台まで上昇。原油先物も一時103ドル台を回復しました。


本日の見通し

米通信大手ATTがドイツテレコム子会社のTモバイルUSAを買収することを発表。買収金額約390億ドルは今年最大で、米国勢を中心に通信業界再編の思惑が高まっています。NYダウは大型M&Aを好感し178ドル高となっており、シカゴ日経平均先物は大証比410円高の9540円。本日の東京市場にも株高が連鎖する可能性が高く、ドル円・クロス円ともリスク選好型の円売りが優勢となりそうです。福島第一原発の放射能漏れは依然予断を許さない状況にありますが、報道によればすでに2号機までの通電が完了しており、今後は冷却装置が復旧できれば事態が収束に向かう可能性が出てきます。原発事故の収拾のめどさえ立てば、市場の関心が日本の復興需要に移る可能性が出てきます。菅首相は昨日「危機的状況を脱する光明が見えてきた」と発言しています。

米著名投資家のウォーレン・バフェット氏は「日本は打撃から直ちに回復するだろう。一時的な困難の局面は日本株買いの機会」との見方を示しました。阪神大震災など数々の危機を乗り越えてきた日本の底力を信じるなら、日本の先行きは暗くないのかもしれません。

昨日は相場が落ち着いていたこともあり、円売り介入は見送られましたが、10年半ぶりのG7協調介入の余韻はまだ残っており、投機的な円買いはしばらく手控えられる見通しです。ただG7がこのレベルから押し上げ介入を実施する可能性は小さいと見られ、リビア情勢の悪化や福島原発の放射能漏れが続く中では上値を積極的に買い進むことも困難でしょう。3月期末を控えて日本企業のリパトリや機関投資家のリスク資産縮小の動きが強まることも予想され、協調介入後の高値82円付近を突破していくには、新たなエネルギーが必要となりそうです。今後数日間で介入期待が肩透かしに終われば、介入の起点となった79.50円付近へ押し戻される可能性もないとはいえず、慎重な押し目買いにとどめておくのが賢明でしょう。

トリシェECB総裁はじめECB高官はそろって「強い警戒(strong vigilance)」との利上げ予告の決まり文句を使用しており、どうやら来月の利上げは濃厚と見てよさそうです。対する米国は政府が買い上げたMBSを市中に売却する計画を発表しましたが、利上げにはまだまだ長い道のり。日本はさらなる金融緩和や、場合によっては復興資金調達用の国債を日銀が直接引き受けよという議論が高まる可能性もあり、金利動向面から言えばユーロが頭一つ抜け出しています。またユンカー・ユーログループ議長は「EU財務相らはESM(欧州安定メカニズム)の全ての要素で合意した」と発言しており、欧州高債務国の信用不安の話題性も低下していく可能性が高いでしょう。
株高連鎖期待を背景にリスク選好型のドル売り・円売りも強まるうえ、米ATTによるTモバイルUSA(ドイツテレコムの子会社)の買収で、ユーロ買い観測が出る可能性もあります。テクニカルにも、対ドルは昨年11月の高値1.4280付近を突破すれば、昨年6月以来の上昇トレンド継続が確認され、上昇にさらに弾みがつく可能性があります。また対円も、115.70〜116円の抵抗線をクリアに抜ければ昨年5月以来の持ち合いレンジからの上放れとなり、上昇モメンタムが一気に強まる可能性があります。

ポンドも株高・リスク選好の流れやユーロ高につられて堅調な動きとなりそうです。今夕発表される英2月の消費者物価指数は、前回の+4.0%(前年比)から+4.2%まで上昇が加速する見通しで、英中銀の利上げ観測が再燃する可能性があります。明日の英中銀議事録と合わせて注目すべきでしょう。

リビア情勢は多国籍軍による空爆開始で新たな局面を迎えたようです。米英仏はリビア国民の安全確保というよりカダフィ政権の排除を狙っており、カダフィ大佐がイラクのサダム・フセイン元大統領のように地下に潜れば、混乱が長期化する可能性があります。当面原油相場や金相場は上昇が続く可能性が高く、豪ドルやカナダドルなど資源国通貨を物色する動きも強まりそうです。G7協調介入を受けて極端な円高懸念が後退していることも、高金利通貨にとってサポートとなるでしょう。

予想レンジ
ドル/円:80.80-81.80
ユーロ/ドル:1.4150-1.4300
ユーロ/円:114.50-116.00
ポンド円:131.20-133.20
豪ドル/円:80.50-82.80

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