スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。

ポルトガルの信用不安受けてユーロ反落 (2011/3/24 (木))

昨日の概況

東京市場では、福島の原発事故の収拾のめどが立たないうえ、東京の水道水から放射性物質が検出されたこともリスク回避ムードを強め、日経平均が一時200円超のマイナス。ドル円は月末・3月期末を控えて輸出企業の円転やリパトリと見られるフローが断続的に入ったこともあり、80.75円付近までじり安となりました。このレベルでは介入警戒感が強く、日銀がEBS(電子ブローキングシステム)に買いを入れているとの噂もちらほら。またポンドドルが英中銀議事録の内容に失望して下落したことからドル買いがやや強まり、81.05円付近へ反発しました。NY市場ではダウがマイナス圏でスタートしたことや、米2月の新築住宅販売件数が25.0万件(予想29.0万件)と過去最低を記録したことから80.80円付近へ再度下押し。しかしダウが小幅のプラス圏へ浮上すると手掛かり材料難となり、80.85円付近で膠着状態となりました。ダウは日本の震災復興需要期待から素材関連セクターが買われ、67ドル高で終了しました。

ユーロは、アイルランドやポルトガルなど欧州高債務国の信用不安を背景に、アジア市場では対ドルは1.4150付近、対円は114.25円付近へ軟化。欧州市場では英中銀議事録を受けてユーロポンドが上昇したことから、対ドル・対円もそれぞれ1.4210付近、115.00円付近へ反発しましたが、欧州議会本会議が欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の実質融資能力を4400億ユーロに拡大する計画の詳細決定を「6月末までに延期する」と発表したことをきっかけに反落。ポルトガルの予算案が否決されるとの観測や採決が延期されるとの噂を背景に1.4105付近、114.10円付近へ下落。終盤は、ポルトガル議会が政府提案の緊縮財政策を否決し、ソクラテス首相が辞任を表明したことから、1.4080付近、113.90円付近まで続落しました。なおユンカー・ユーログループ議長は「円はゆっくりと間違った方向に進んでいる。G7、日銀、ECB、米国、FRBは円についてさらなる協調行動を取る用意ある」と発言しましたが、反応は見られませんでした。

ポンドは、3月10日開催分の英中銀議事録で、政策金利据え置きに対する反対が3票にとどまったことを受けて失望売りが強まり、対ドルは1.6220付近、対円は131.20円付近まで下落しました。議事録によると、前回同様ウィール委員とデール委員は0.25%の利上げを主張し、センタンス委員が0.5%の利上げを主張。資産買い入れ枠の現状維持(2000億ポンド)の決定は8対1で、ポーゼン委員が前回同様500億ポンドの拡大を主張しました。またオズボーン英財務相が2011年、2012年のGDP見通しを下方修正したことも売り材料となりました。

豪ドルは、欧米の株式市場が堅調な動きとなり、金・原油相場、CRB商品指数もそろって上昇したことから、対ドルは1.0155付近、対円は82.15円付近まで上昇しました。原油相場は、リビア情勢の悪化に加えて、米週間在庫統計でガソリン在庫が減少したことを受けて、一時106ドル台と2008年9月以来の高値を更新。金相場は一時1440ドル台へ上昇し、過去最高値(1445.70ドル)に迫りました。CRB商品指数も357ポイント付近と大震災発生直前の水準へ回復しました。


本日の見通し

東北大震災の死者・不明者は2万5千人を突破。福島第一原発の電源は回復したものの、冷却装置の稼働は難航している模様で、事態の収拾のめどはまだ立っていません。その間、東京・江戸川から取水する都の水道水から放射性物質が検出され、都内の店先からはミネラルウォーターが姿を消しつつあります。いよいよ首都圏にも放射能汚染の懸念が波及し始めており、本日もリスク回避ムードから株価・ドル円とも上値の重い動きが続きそうです。「復興需要が出れば日本経済は立ち直れる」との楽観的な見方がなお多いものの、電力不足と放射能リスクが長期化すれば、生産や消費が深刻な打撃を受ける可能性も小さくありません。

また月末・年度末を控えて実需のドル売りやリパトリの円買いがかさむ時期でもあり、需給的にも下押し圧力が高まりそうです。このところ堅調だったユーロが、欧州高債務国の信用不安再燃で売られていることも、ドル円の足を引っ張る可能性があります。今週に入って81円前後での膠着が続いていますが、リスク選好が早晩回復する見込みは立たず、米国景気指標もこのところパッとしないものが続いていることから、82円を突破していく感じは今のところありません。むしろG7の介入スタンスや協調姿勢を試したいムードから、いずれは介入実施後の安値80.50円付近、さらには協調介入の起点となった79.50円付近を試す展開も十分考えられます。引き続き下値リスクをケアし、慎重スタンスで臨むべきでしょう。

ユーロは重要レジスタンスの1.4280付近、115.70円付近を抜け切れなかった失望もあり、目先は調整局面入りが予想されます。来月のECBの利上げは想定済みシナリオとなり、市場の関心は欧州高債務国の債務問題にシフトしつつあります。ポルトガルでは緊縮財政案が否決されたことを受けて政局流動化が懸念されるうえ、近くEU支援要請に追い込まれるとの観測も高まっています。またアイルランドでも10年債利回りがユーロ導入以来初の10%台を示現し、債務再編(元本カット)の懸念が高まっています。四半期末・年度末を控えて、投機筋の利益確定の動きや企業のリパトリによる売り圧力も高まると見られ、向こう数日間は下落余地を探る展開と見ておくのが賢明でしょう。

ポンドも、英中銀議事録では利上げ支持が3人にとどまったことが失望となり、このところの上昇幅を縮小する展開となる見通しです。議事録では「近いうちにインフレ率は5%を超えるリスクがある」としながらも、「インフレは中期的には後退すると思われる」との認識を示しており、利上げはさほど差し迫っていないムードです。タカ派の筆頭のセンタンス委員が5月末で退任することもあり、4-6月中の利上げの可能性は小さいと見るべきかもしれません。

この間、豪ドルなどハイリスク通貨は上値を拡大する展開となりそうです。日本の震災復興需要期待から商品市場全体が引き締まっており、資源国通貨を物色する動きがさらに強まる可能性があります。リビア情勢が悪化していることに加えて、日本の原発事故を受けて世界的に火力発電への回帰が加速する可能性が高まっており、化石燃料(石油・石炭・天然ガス)の需要が高まっていることから、地下資源が豊富な豪ドルやカナダドルを選好する動きが強まるでしょう。また米国では景気鈍化懸念と長期金利低下、欧州では高債務国の信用不安、日本では放射能汚染と、ドル・ユーロ・円がいずれも買いづらく、消去法的にもオセアニア通貨が選好される可能性があります。

予想レンジ
ドル/円:80.50-81.20
ユーロ/ドル:1.4000-1.4180
ユーロ/円:113.00-114.80
ポンド円:130.20-132.20
豪ドル/円:81.50-82.80

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