スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。

豪ドルが変動相場制移行後の高値更新 (2011/3/26 (土))

昨日の概況

ドル円は、東京市場では一段と動意が乏しい展開となり、オプションのストライクが観測される81.00円をはさんでわずか10銭程度のレンジ内で完全に膠着。しかし欧州市場序盤、EU首脳会議の声明草稿に「G7の円売り協調介入を歓迎する」との一文が盛り込まれていたことをきっかけに、81.10円付近からショートカバーを巻き込み81.35円付近へ上昇。NY市場朝方は「格付け会社S&Pが日本の保険会社9社の格付け見通しをネガティブに引き下げ」との報道を受けて、一旦80.90円付近へ急反落したものの、米10−12月期GDP・確報値が前期比年率+3.1%と改定値の+2.8%から上方修正され予想の+3.0%を上回ったことから81.20円付近へ反発。さらにプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁が「出口戦略はそう遠くない将来に着手する必要がある。利上げとともに資産売却計画を提示すべき」とタカ派発言したことから、一時81.45円付近まで上昇しました。プロッサー発言を受けて、米国債利回りも3.46%付近へ上昇。米国株式市場ではオラクルの好業績見通しを受けてハイテク株に買いが入り、ダウは50ドル高で終了しました。

ユーロは、アジア時間、格付け会社S&Pがポルトガルのソブリン格付けをBBBへ2段階引き下げ、引き続き格下げ方向で見直しとしたことから、対ドルは1.4140付近、対円は114.70円付近へ下押し。欧州市場では、独3月Ifo景況感指数が111.1と予想の110.5を上回ったことや、格付け会社ムーディーズがポルトガルの格付け(A3・ネガティブ見通し)を維持すると発表したことから、対ドルは1.4175付近へ持ち直し、対円はドル円の上昇にもつられ一時115.20円付近へ急伸。しかしNY市場では、欧州の決済機関LCHクリアネットが、S&Pによる格下げに対応しポルトガル国債を適格担保から除外すると発表したことや、メルケル独首相が「ユーロが過去の罪から回復するには数年を要する」と発言したことを受けて急反落。米10−12月期GDP・確報値の上振れや、プロッサー・フィラデルフィア連銀総裁のタカ派発言を受けてドル買いも強まり、対ドルは1.4060付近まで下落。対円も114.50円付近まで下落し、終日上値の重い動きとなりました。

ポンドは、欧州市場ではユーロ安につられ1.6065付近へ下落。NY市場では、米GDP確報値の上方修正やプロッサー発言を受けてドルが買われたこともあり、1.6010付近へ下落しました。対円は、ドル円のショートカバーにつられ一時131.05円付近へ上昇したものの、後続は見られず130.20円付近へ反落しました。

豪ドルは、株高連鎖を受けてリスク選好が回復したことや、英豪系資源大手BHPビリトンが豪州の鉄鉱石・石炭事業を強化するため、95億ドルの設備投資を行うと発表したことから、対ドルは1.0250付近、対円も83.30円付近と上値を試す動き。変動相場制移行後の高値1.0255付近を突破すると、ストップロスの買いを巻き込み一時1.0295付近へ上昇。対円も83.60円付近へ押し上げられました。

カナダドルは、株高・コモディティー高を受けたリスク選好の流れから対ドルは0.9745付近、対円は一時83.45円付近へ上昇。しかしカナダ政府が提出した予算案が議会で否決され、野党自由党が提出したハーパー保守党内閣に対する不信任案が可決されたことから、0.9825付近、82.85円付近まで押し戻されました。


本日の見通し

ドル円は介入警戒感とリパトリ圧力にはさまれ81円前後での膠着が続いていましたが、ようやく持ち合いから抜け出し81.45円付近と一週間ぶりの高値をつけました。とはいっても今週のレンジは1円にも満たず、これで上昇に弾みがつくとも限りません。プロッサー氏はタカ派として知られており、昨日の発言もさほどサプライズではないことから、影響は一過性となるかもしれません。「利上げと資産売却」という出口戦略が早晩FOMCのコンセンサスになるとは思えず、利上げ期待が高まったと見るのは早計でしょう。

福島原発の放射能漏れに収束のめどが立たないうえ、リビア情勢も緊迫が続いており、シリアやイエメンでも反政府デモが拡大しています。こうした不透明要因を背景としたリスク回避の動きが続く限り、下値警戒はまだ怠るべきではないでしょう。また野田財務相は「介入時に比べれば為替相場は落ち着いてきている。介入は一定の水準の時ではなく、過度な変動あった時」と発言しており、この水準からの押し上げ介入は期待薄。来週は月末・3月期末を前に輸出企業のスポット円転やリパトリ圧力が一段と強まると見られ、需給的にも上値を追うことは厳しくなると思います。

ユーロは、ポルトガルの信用不安や政局不透明感を懸念し、再度下値を探る動きとなりました。ポルトガルでは緊縮財政案の否決とソクラテス首相の辞任を受けて国債利回りが8%台へ急騰し、今後の国債大量償還(4月15日に43億ユーロ、6月15日に49億ユーロ)をにらんでEUの救済を受け入れざるを得ない状況となっています。EU首脳が欧州金融安定基金(EFSF)の融資能力を2500億ユーロから4400億ユーロへ引き上げることで基本合意しているものの、詳細決定が6月末まで先送りされていることも不安材料です。

ただポルトガルの規模であれば現在のEFSFの能力で対応できることから、支援要請をきっかけに当面の悪材料出尽くしとなるとともに、金融不安が終息に向かうとの見方が浮上する可能性があります(もちろんスペインが支援を必要としないことが前提ですが)。高債務国の信用不安が一段落となれば、市場の関心は再びECBの利上げ期待に向かう可能性が高いでしょう。また原油への依存度が高い米国経済の下振れ懸念が高まっているうえ、日本は電力不足や放射能漏れで今後深刻な局面を迎えることから、消去法的に欧州通貨が買われる可能性も高いと思います。調整売り一巡簿は再度重要レジスタンスの1.4280付近、115.70円付近を試す展開も十分考えられるでしょう。

豪ドルは、株高・コモディティー高を背景に引き続き上値を拡大する展開と見ます。世界銀行は東日本大震災について復興には5年かかると予想。ゴールドマンなど複数の米系証券は、商品需要が高まり豪州には利益をもたらすとの見方を示しています。特に日本の原発事故を受けて代替燃料の石炭や天然ガスが高騰していることも、豪ドルにとって強気材料となるでしょう。

一方カナダでは、議会解散・5月総選挙実施が有力となり、政局不透明感が重石となる可能性があります。ただハーパー首相率いる与党保守党はもともと議会で過半数に達しておらず、これまでも不安定な政権運営を強いられてきたため、政局がカナダドルにとってあらためて深刻な懸念材料となるとは思えません。カナダの景気・財政は堅調で、市場の関心は原油など資源価格高騰に集中していることから、政局不透明感による下落余地は限定的と見ています。

予想レンジ
ドル/円:80.50-81.80
ユーロ/ドル:1.4020-1.4180
ユーロ/円:114.00-115.50
ポンド円:129.50-131.50
豪ドル/円:82.80-84.20

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