スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。

ドル円、介入後の高値に迫る動き (2011/3/29 (火))

昨日の概況

ドル円は、米国の出口戦略への期待感を背景としたドル買いの流れを引き継ぎ、東京市場では一時81.80円付近へ上昇。しかし81.80-82.00円に積み上がった輸出企業のドル売りオーダーや年度末のリパトリのフローに頭を押さえられ、ここで上昇一服。一連の米国経済指標にも反応は見られず、81.70円付近での膠着が終日続きました。米2月の個人所得は前月比+0.3%(予想+0.4%)、個人消費支出は+0.7%(予想+0.5%)、コア個人消費支出(PCE)デフレーターは+0.2%(予想+0.2%)とマチマチの結果。また米2月の中古住宅販売保留件数指数は前月比+2.1%と予想の±0.0%を上回りましたが、材料視されませんでした。

ユーロは、週末に独のバーデン・ビュルテンブルグ州で行われた議会選挙で、原発反対を掲げる緑の党が勝利し初めての州首相を輩出する見込みとなったことから、対ドルは1.4025付近、対円は114.15円付近まで続落。しかし狼狽売り一巡後は持ち直し、欧州市場序盤では対ポンドでのユーロ買いにつられ1.4085付近、115.10円付近へ反発。格付け会社S&Pがポルトガルの銀行を格下げしたことから、1.4030付近、114.60円付近へ下押ししたものの、トリシェECB総裁が「インフレ率は長らく物価安定目標を上回る」と懸念を示したことから1.4110付近、115.30円付近まで上昇しました。ただS&Pが「今週中にポルトガルの格付けをさらに引き下げる可能性ある」とコメントしたことから上値も重くなり、1.4080付近、115.05円付近へ押し戻されました。

ポンドは、ポーゼン英中銀政策委員が「インフレ率は2012年中旬までに1.5%へと下落するだろう」と発言したことや、英銀バークレイズによる豪銀マッコーリー買収の観測、英保険会社による豪洪水被害に対する保険金支払いの観測にからんだ豪ドル買い・ポンド売りが強まったことから、対ドルは1.5940付近、対円は130.30円付近へ下落。センタンス委員が「英中銀が徐々に利上げに動くことを望む」と発言しましたが、目新しさはなく反応は限定的でした。しかしNY市場ではユーロやスイスフランの上昇につられて欧州通貨買いが強まり、1.6035付近、131.00円付近まで持ち直しました。

スイスフランは、IMF(国際通貨基金)が「スイス経済には広範な回復が見られ、これ以上の衝撃がなければスイス中銀は間もなく利上げが可能」との見解を示したことから、対ドルは0.9155付近、対円は89.25円付近へ上昇しました。

豪ドルは、前述の豪ドル買い・ポンド売りのフローを受けて、対ドルは一時1.0310付近まで変動相場制移行後の高値を更新。対円も84.20円付近まで上昇しました。しかしこうしたフローが一巡すると上昇も息切れとなり、1.0255付近、83.80円付近へ反落。NY市場終盤はダウがマイナス圏に沈み、原油相場やCRB商品指数も下落したことから、1.0240付近、83.65円付近まで続落しました。原油相場は、リビアの反政府派が制圧地域を広げていることを受けて原油輸出再開への期待が高まり、103ドル台まで続落しました。

本日の見通し

今日はスポット応当日が期末最終日に当たるため、輸出企業のドル売りやリパトリがらみの円転が集中する可能性があり、需給的にはやや下値不安があります。しかしこうした期末要因が剥落すれば、市場の関心が新年度の外債投資に向かい上昇余地が開けてくると見られます。介入後の高値82.00円付近では抵抗感が強いでしょうが、徐々に下値を切り上げ、遠からず同水準を突破していくと見ています。

震災の影響で海外から物資の輸入が増えると見られる一方、「震災で輸出が減少したため輸出企業が先物予約のドル売りを買い戻している」との観測も出ており、中期的な需給バランスも大きく変わっていく可能性があります。日本の震災被害や放射能漏れ・電力不足の影響が予想以上に深刻で、個人消費や企業の生産活動・輸出が急激に落ち込み、短期的な景気後退に陥る可能性も高まってきました。G7の協調介入を受けてリスク回避型の円買いが封じられる一方で、今後はむしろ海外勢の日本資産売りや日本撤退による「悪い円安」が進行する可能性も否定できません。

さらに株高・ボラティリティー低下でリスク選好が高まっているうえ、日銀の大量の資金供給を受けて短期市場に円が滞留しているため、円キャリートレード意欲が刺激されそうです。豪ドル円などクロス円で円安が進めば、ドル円も82円を上抜けしやすくなってくるでしょう。

ユーロは遠からず主要抵抗線の1.4280付近、115.70円付近をトライする展開と見ています。ポルトガルが金融支援の受け入れを余儀なくされるとの見方から同国の国債利回りがユーロ導入以来最高を記録しており、短期的にはユーロは買いづらいムードもありますが、ポルトガルが必要とする資金は約750億ユーロ程度と見られ、欧州金融安定基金の現在の融資能力(2500億ユーロ)で十分対応可能であることから、同国が支援を要請すればむしろ金融安定につながると受け止められる可能性が高いと思います。ポルトガル救済で欧州高債務国の信用不安も材料出尽くしとなれば、市場の関心はいよいよECBの利上げサイクル入りにシフトすることになるでしょう。今夜発表される独3月の消費者物価指数・速報値は前年比+2.2%と約2年半ぶりの高水準となると予想されており、利上げ期待を一段と高めることになりそうです。独地方選挙での敗北に関しても、メルケル独首相は内閣改造や引責を否定しており、政局への影響も限定的となりそうです。

豪ドルは、対ドルで歴史的な高値圏にあるうえ、四半期末を控えていることもあり、目先は利益確定の売りに押される展開が予想されます。しかし期末要因が剥落すれば新年度の外債投資に市場の関心が向かうと見られるうえ、日本の震災による景気低迷や財政悪化を見込んだ悪い円安の兆候も見られ、対円主導で上値を試す展開も考えられます。株高・コモディティー高を背景に資源国通貨を物色する流れにも大筋で変化はないでしょう。

カナダドルは、週末にハーパー・カナダ首相が議会を解散し、5月2日に総選挙を実施すると発表したものの、世論調査で中道右派の与党・保守党が第1党を維持する可能性が高まったことから買戻しが強まり、対ドルは0.9745付近、対円は83.85円付近まで反発しました。政局不透明感はあるものの、カナダの総選挙はここ7年弱で4回目とあって、日本と同様政治ネタは市場の材料として取り上げにくいかもしれません。日本の震災被害や放射能漏れを懸念して日本から逃避した資金が資源国通貨に流入する可能性も小さくなく、豪ドル同様堅調に推移する見通しです。


予想レンジ
ドル/円:81.20-82.20
ユーロ/ドル:1.4020-1.4180
ユーロ/円:114.20-116.00
ポンド円:130.20-131.80
豪ドル/円:83.20-84.80

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