スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。

セントルイス連銀総裁のタカ派発言を受けてドル上昇 (2011/3/30 (水))

昨日の概況

東京市場では、スポット応当日が3月末とあって、輸出企業の円転や年度末のリパトリがらみの円買いが強まり一時81.55円付近へ下落。しかしこの水準にはEBS(電子ブローキングシステム)に大量の買いオーダーが入っており、当局の覆面介入の観測が浮上したことから81.75円付近へ反発。欧州市場序盤に、タカ派のブラード・セントルイス連銀総裁が「FOMCの政策正常化の開始、全ての世界的な不透明要因が解消されるのを待たない可能性」「米QE2(量的緩和第2弾)の規模、6000億ドルを若干下回る可能性」「QE2の縮小はおよそ1000億ドルになる可能性」などと発言したことをきっかけにドル買いが強まり82円を突破。短期筋のショートカバーを巻き込んで82.45円付近まで急騰しました。NY市場では、米1月のS&P/ケースシラー住宅価格指数が前年同月比-3.06%(予想-3.20%)と前月の-2.43%から悪化したことや、米3月の消費者信頼感指数が63.4と予想の65.0を下回ったことから82.30円付近へ反落したものの、NYダウが81ドル高までじり高推移となったことや、米国10年債利回りが3.50%付近まで上昇したことから、82.45円付近と高値圏へ持ち直しました。

ユーロは、東京市場から欧州市場序盤にかけてはECBの利上げ観測を背景とした買いが強まり、対ドルは1.4145付近、対円は115.60円付近へ上昇。しかしブラード・セントルイス連銀総裁のタカ派発言を受けてドル買いが強まると、対ドルは1.40台へ反落。独3月の消費者物価指数が前年比+2.1%と予想の+2.2%を下回ったことや、格付け会社S&Pがポルトガルとギリシャの格付けを引き下げたこともあり、一時1.4050付近まで下落しました。一方対円は、ドル円の82円突破につられ円売りが強まり116円台へ続伸。NYダウの堅調推移にもサポートされ、116.40円付近と昨年5月以来の高値をつけました。これにつられて対ドルも切り返し、シュタルクECB専務理事が「金利を徐々に正常化させる時期にきている」と発言したこともあり、1.4110付近まで持ち直しました。

ポンドも、ブラード・セントルイス連銀総裁のタカ派発言を受けて、対ドルは1.5945付近へ下落。しかしドル円の82円突破をきっかけにクロスでも円売りが活発化し、対円は131円付近から132.10円付近まで上昇。これにつられて対ドルも1.6015付近まで回復しました。ウィール英中銀政策委員が「インフレ率は予測中央値を上回る可能性。引き続き政策は引き締めるべきだと信じている」と発言したこともサポートとなりました。

豪ドルも、ブラード・セントルイス連銀総裁のタカ派発言を受けて、対ドルは一時1.0205付近まで下落。しかし対円は、株高・コモディティー高を受けたリスク選好型の円売りが継続し、84.85円付近と昨年5月以来の高値へ上昇。対ドルもこれにつられて1.0295付近まで急反発しました。


本日の見通し

ドル円は、G7介入後の高値82円を突破したことで、自律的な回復局面に入った可能性が出てきたと思います。もう少し抵抗が強いかと思っていましたが、意外にもあっさりと抜けてしまいました。月末の輸出企業のスポット円転や期末のリパトリの円買いがピークアウトする一方、今日(5・10日)・明日(月末)は逆に輸入決済や海外送金などでドル需要が高まる可能性があります。また株価堅調・ボラティリティティー低下でリスク選好が拡大し、円キャリートレード意欲が高まっているうえ、今後しばらくは新年度の外債投資拡大を先取りする動きも考えられ、ドル円、クロス円とも円売り圧力が強まる見通しです。

さらに海外勢の日本売りを伴う「悪い円安」が進行している可能性もあります。震災被害や電力不足を受けて生産が停滞し、輸出が大幅に落ち込む一方、食料や物資の不足は当面輸入に頼ることになります。日本の大手製造業が海外に生産をシフトする可能性もあり、今後は貿易収支が大幅に悪化し、赤字に転落するリスクも考えておく必要があります。リセッション入りの可能性が高くなり、財政悪化懸念からソブリン格下げのリスクも高まるでしょう。すでに一部で風評被害が出ていますが、福島原発の放射能漏れを懸念して日本資産を売却したり、日本市場から撤退する動きも出て来るかもしれません。G7協調介入によって、リスク回避型の円買いが封じられたおかげで、日本や円に対するリスクが一気に浮上してきたわけです。

ブラード・セントルイス連銀総裁はFOMCの投票メンバーではありませんが、QE2の規模縮小で具体的な数字が出てきたことは注目に値します。これで今夜のADP雇用統計や金曜日の非農業部門雇用者数(NFP)が強い数字となれば、一気に出口戦略をめぐる議論が活発化する可能性が出て来るでしょう。米国債利回りが上昇し、金利面からもドルがサポートされる可能性が高まります。ドル円は震災発生前の水準である83円付近、さらに年初来高値の84円付近を視野に入れる展開と見ます。

ユーロは、ポルトガルなどの国債利回りの上昇が続いているものの、欧州金融安定基金による救済シナリオがすでに想定済みとなっており、もはや大きなユーロ売り材料とはならない見通しです。欧州高債務国の信用不安に関する話題が下火となれば、ECBの利上げ期待や、株高によるリスク選好の回復を背景にユーロが底堅い地合となるでしょう。ただし対ドルは、米国の出口戦略をめぐる思惑が浮上していることから、目先は上昇余地も限られ1.40-1.41台でもみ合う展開となりそうです。

豪ドルなどハイリスク通貨の騰勢もまだまだ続きそうです。米国のQE2縮小の観測が浮上しているものの、政策金利の引き上げまではまだ距離感があり、高金利通貨買いを妨げるほどの影響はなさそうです。その間、株高・ボラティリティー低下を背景にリスクテイク意欲が一段と高まることが予想され、日銀の潤沢な資金供給で金融市場に大量の円資金が滞留していることから、特に円キャリートレード意欲が刺激される可能性が高いと思います。世界的なエネルギー・素材需給ひっ迫を背景とした資源国通貨高の地合に変化はないうえ、日本の震災被害による景気後退懸念やソブリン格下げリスク、放射能漏れを懸念した日本売りが強まる公算も大きく、豪ドル円の買いが人気化する可能性が高いでしょう。

予想レンジ
ドル/円:81.80-83.20
ユーロ/ドル:1.4050-1.4200
ユーロ/円:115.50-117.50
ポンド円:130.80-133.20
豪ドル/円:83.80-85.80

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